子ども家庭福祉研究・研修機構
Research and Training Institute of Social Work with Children and Families

英国からの手紙(A letter from the UK)

「英国からの手紙」について

この「英国からの手紙」のシリーズは、英国や世界の子ども家庭福祉やソーシャルワークの政策・研究動向を日本のソーシャルワーカーや研究者に伝えるものです。子ども家庭福祉・ソーシャルワーク分野の英国の著名な研究者ジュン・ソバーン(June Thoburn)先生が書き手で、年に数回のペースで継続していきます。

「英国からの手紙」の筆者について

June Thoburn

  • 英国国立イーストアングリア大学ソーシャルワーク学部教授・名誉教授
  • 同大学子ども家庭研究所創設者
  • CAFCASS(Children and Family Court Advisory and Support Service)特別顧問
  • CBE(Commander of the Order of the British Empire.大英帝国勲章受章者)


オックスフォード大学卒業。1963年にソーシャルワーカーの資格を取得し、1979年に英国国立イーストアングリア大学(UEA)と英国ノーフォーク郡議会から共同任用されるまで、イングランドとカナダの地方自治体の子ども家族ソーシャルワーク部門やジェネリックプラクティス(Generic practice)で勤務していた。

UEAでは、子ども家庭研究所(Centre for Reseach on the Child and Family)などの創設者として、ソーシャルワーカーがさまざまな情報源に基づく知識を、適切に活用できるよう支援する革新的な方法を見つけることに特に関心を持っていた。最近では国際的な子ども福祉に大きな関心を寄せている。

現在、子どもや若者の利益を代表し、英国の家庭裁判所の訴訟において、子どもと家庭裁判所のアドバイザリーとサポートサービスを提供する組織CAFCASS*(Children and Family Court Advisory and Support Service)の特別顧問であり、ノーフォーク郡家族司法委員会の議長である。2002年に「ソーシャルワークへのサービス」に対する貢献により、CBECommander of the Order of the British Empire.大英帝国勲章の第3位コマンダー)を授与された。また2023年には英国ソーシャルワーカー協会の生涯功労賞を受賞している。

日本には2回来日し、日本での訳本も3冊出版されている。日本の子ども家庭福祉研究者や里親や児童養護施設などの関係者との交流経験は多い。

Professor June Thoburn

英国からの手紙1(2024年8月30日投稿)

英国からの手紙1(2024年8月30日投稿) 

深刻な資金不足の中での制度改正・実践改善への動き



June Thoburn

  • 英国国立イーストアングリア大学ソーシャルワーク学部教授・名誉教授
  • 同大学子ども家庭研究所創設者
  • CAFCASS(Children and Family Court Advisory and Support Service)特別顧問
  • CBE(Commander of the Order of the British Empire.ソーシャルワーク分野大英帝国勲章受章者)

はじめに

 この「英国からの手紙」の冒頭で、お伝えしたいことがあります。英国の子ども家庭ソーシャルワークと社会福祉全般で起きていることについて、私の考えを日本の子ども家庭ソーシャルワーカーと共有できることを光栄に思っていることです。この手紙は、私の良き友人であり同僚でもある西郷教授の提案を受け、年数回程度のシリーズものとして書くことにしました。私は以前日本を数回訪問し、日本のサービスについて学ぶ機会に恵まれました。また『オックスフォード子ども保護システムハンドブック(The Oxford Handbook of Child Protection Systems)』(徳永、福井、西郷、永野、2023年)の日本に関する章や、西郷教授が私の地元ノーリッチ市と私の大学(英国国立イーストアングリア大学)のソーシャルワーク学部を最近訪れた機会を通じ、日本と英国の類似点と違いについての理解を深めました。

 これらの「手紙」を私が書くに際し留意いただきたい点は、政策、法律、データについて言及する場合は、主にイングランドについて触れるということです。弱い立場にいる子どもと家族に対する英国内の4つの国のサービスは、本質的に非常に似ていますが、4つの国にはそれぞれ独自の法律とガイドラインを作成する権限があるため異なる点もあるのです。

 この最初の「手紙」では、ソーシャルワーク・サービスを必要とする子どもや家族の生活に影響を与えてきた政策の発展やサービスを必要とする人々の変化、そして現行のサービスに関する最近の変化に焦点を当てます。今後の「手紙」では、サービスがどのように提供されるか、ソーシャルワーカーや「家族を取り巻くチーム」(多職種協働チーム)の同僚の支援アプローチについてさらに詳しく説明していくつもりです。(これについては、西郷教授が日本語に翻訳した協働実践に関する私の本:ジュン・ソバーンほか(2018)『子育て困難家庭のための多職種協働ガイド』明石書店 を参照してください)。

 14年間にわたる保守党政権の後、現在では労働党政権になり、労働党は議会の多数派となっています。しかし、英国政府は引き続き深刻な財政的困難が続いているという事実から話し始めなければなりません。サービス改善ための積極的な計画はあるのですが、福祉サービス(所得援助、医療サービス、学校・住宅・コミュニティおよび青少年サービス、ソーシャルワークおよびソーシャル・ケアサービス)への資金が非常に制約されているのです。このサービス改善のための積極的な計画の背景には、貧困に苦しむ子どもの数が大幅に増加していること(英国の子どもの3分の1が、少なくとも3年間貧困に苦しんでいる)があります。不安定な仮設住宅に住む人やホームレスの数は 145,800 人であり、これらすべてのサービスとソーシャルワーク・サービスのための資金は、ニーズを満たすのに不十分でした。資金不足のため、ソーシャルワーカーのトレーニングも不十分で、ソーシャルワーク・サービスに対するニーズの高まりに対応するソーシャルワーカーの定着率も低くなっています。

子どもおよび家族サービスの継続と変化

 1989 年の子ども法は、何回かの改正がされ、現在でも主要な子ども福祉法であり、国連の子どもの権利条約に沿ったものです。この法律は、離れて暮らす家族や家族支援サービス、子ども保護サービス、家庭外養護の子ども向けのサービスに関する規定が含まれています。詳細については、前掲の「オックスフォード子ども保護システムハンドブック」の私の章をご覧ください。

 サービスを必要とする人々には変化がありました。一部は利用可能な (ユニバーサル) サービス (特に子どもおよび青少年のメンタル ヘルス サービスと障害のある子ども向けのサービス) の削減の結果であり、また一部は人口動態の変化の結果でもあります。政府の資金削減の結果、地方自治体は、家庭内での弱い立場の子どもや家族への支援サービス(「支援を必要とする子ども」または「早期支援」サービスと言われているもの)を削減しています。評価の高い「Sure Start」ファミリーセンターの多くが閉鎖され、その結果、虐待の疑いで紹介される子どもが増加しています(しかし、実際にサービスを受けられたのはそのうちの33%に過ぎませんでした)。子ども保護計画(子どもの保護のためのケアプラン)が必要と評価された子どもも74%増加しました。さらに驚くべきことに、現在83,840人の子どもが家庭外で養育されています(2008年以降41%増加)。最も顕著なのは、養育を受ける年長の子ども(10歳以上)の増加です。貧困から生じる家族のストレスや家庭内暴力や依存症もその一因であり、不良グループに引き込まれ、不良グループの暴力から保護を必要とするティーンエイジャー、特に男の子が増えています。またこれ以外にもオンラインでの性的虐待も増加しています。(これらは「家族外虐待」と呼ばれます)。なお、保護下にある十代の若者の増加の一部は、保護者のいない難民の子どもの増加によるものです。

何をすべきか?

 最近、政府の資金による独立した調査が 3 件実施され、その問題について報告し、改正を勧告しています。

  • 子ども性的虐待に関する独立調査 (IICSA) (2015-2022) iicsa.org.uk

 この調査では、児童養護施設や寄宿学校、教会、スポーツ、その他のデイサービスにおける過去および現在の性的虐待について調べています。6,000 人を超える子どもの性的虐待の被害者およびサバイバーが証拠を提供し、調査のアドバイザーを務めました。調査では、質の高い研究、文献レビュー、認識されている虐待の調査などが行われました。サービス改善のための詳細な勧告として、次のことが指摘されています。

   - 性的虐待に気づいた場合、子どもたちのための仕事やボランティア活動に従事しているすべての人に、警察やソーシャル・サービスに報告することを義務付ける新しい法律を制定すべきである (義務的報告)

 これは、現在の法律への不必要な改正であるとして、ほとんどのソーシャルワーカーから反対されており、現在まで実施されていません。

  • 子ども福祉に関する独立レビュー(The MacAlister Review/マカリスターレビュー)

https://committees.parliament.uk/publications/45122/documents/223512/default/

 このレビューは、子どもの福祉サービスのあらゆる側面の問題について証拠を集め、まとめてあります。このレビューでは、家族支援サービスへの資金提供を大幅に増やすことを勧告しています。このことにより、施設で養護される子どもたちに掛かる非常に高い費用が削減されることが期待されています(児童養護施設の80%以上と、里親家庭の養護の約50%は、大きな民間営利機関によって提供されています)。特に、親族里親への資金提供の増額と改善を求めています。また、必要なサービスを決定するために家族会議をより多く活用するなど、実践に関する詳細な勧告も含まれています。

 保守党政権は、最近の選挙で敗北し労働党政権に取って代わられる前に、勧告された改善に取り組み始めていましたが、提案されていた資金提供はされないままでした。(DfE; Department for Education(2023Stable Homes Built on Love/教育省(2023)『愛に基づいた安定した家庭) www.gov.uk

 障害のある子どもに対する在宅および居住サービスの不十分さについては特に懸念が示されています。マカリスターレビューが勧告している事項の一つは、英国政府の法制度(改革)委員会が障害のある子どもに対するサービスを改善するため、法律が必要かどうかを検討すべきであるというものです。(Law Commission Consultation – Possible changes in legislation/法制度(改革)委員会協議会「障害のある子どもに関する法律改正の可能性」)

  • 英国の議会プロセスでの重要な特徴は、特別委員会システムです。教育特別委員会はすべての政党の国会議員で構成され、政府の仕事を見直す上で重要な役割を果たしています。2024年に、教育特別委員会は、子どもと家族の社会福祉サービスの供給と受給することに関わるすべての人から資料を収集しました。子どもの社会福祉サービスに関する調査です。2024年5月に選挙が提起された時点で業務は停止しています。書面による資料や口頭による様々な証拠の録音記録は www.gov.uk で入手できます。新政権への助言が書かれている議長からの手紙は、非常に興味深い内容になっています。

https://parliamentlive.tv/event/index/35512eaa-99fa-4917-981e-30933618204e

 

 このすべてに関する批判的な論評も興味深いかもしれません。Sen, R &Kerr C. (eds) (2023) The Future of Children’s Care. Policy Pressこのことに関する、とりわけ実践とサービス提供における新たな展開については、今後さらに詳しく説明して行きます。

おわりに

 この手紙について、皆さんからの反響があることを願っています。何かご質問や、私に明確にして欲しい点、またはもっと詳しく話して欲しい点がありましたら、ぜひお知らせください (j.thoburn@uea.ac.uk)。 ソーシャルワークに関する私の考察の背景についての詳細は、私のウェブページでご覧ください。

https://research-portal.uea.ac.uk/en/persons/june-thoburn


【原文】

A Letter from the UK

 

June Thoburn

 

I open this my introductory ‘Letter from the UK’ by saying it is an honour to be invited by my good friend and colleague Professor Saigo to share with Japanese child and family social workers my reflexions on what is happening in UK Child and family social work and social services more broadly. I have been privileged to spend some time in Japan learning about your services, and my understanding of similarities and differences was up-dated by the chapter on Japan in ‘The Oxford Handbook of Child Protection Systems’ (Tokunaga, Fukui, Saigo and Nagano, 2023) and by Professor Saigo during a recent visit to my home town Norwich and my University School of Social Work (University of East Anglia).

 

An important point to make as I write these ‘letters’ is that when I refer to policy, legislation and data, I will mainly be referring to England. Although services for vulnerable children and families across the four UK nations are essentially very similar, each of the four has powers to make their own laws and guidance.

 

In this first letter I shall concentrate on policy developments that have impacted on the lives of the children and families who may need a social work service, changes in those who need services and recent and proposed changes in the services available.  In future letters I shall say more about how the services are provided and the helping approaches of social workers and their colleagues in the ‘teams around the family’ (see my book on collaborative practice translated into Japanese by Professor Saigo).  

 

I have to start with the fact that after 14 years of a Conservative government we now have a Labour government with a large majority, but with severe ongoing economic difficulties. This means that despite positive plans for service improvement, funding for welfare services is very restricted (income support, health services, schools, housing, community and youth services as well as social work and social care services). The background to the positive plans for service improvement I am writing about in this ‘letter’ is that numbers of children living in poverty have greatly increased (a third of all English children have been living in poverty for at least 3 years); the numbers in insecure temporary housing or homeless is 145,800) and the funding of all these services as well as social work services has been inadequate to meet need. This has resulted in insufficient social workers being trained and poor retention rates to meet the growing need for social work services.

 

Continuity and change in child and family services

 

The 1989 Children Act, with some up-dating amendments, remains the main child welfare legislation and is in line with the UN Convention on the Rights of the Child. The legislation combines provisions, for separated families as well as family support services, child protection services and services for children in out-of-home care. You can see more detail in my Chapter in the 2023 ‘Handbook of Child Protection Systems’. There have been changes in those needing services, partly as a result of the cuts in generally available (universal) services (especially child and adolescent mental health services and those for disabled children) and partly as a result of demographic changes. As a result of government funding cuts, local authorities have cut support services to vulnerable children and families in their own homes (referred to as ‘children in need’ or ‘early help’ services). Many well respected ‘Sure Start’ family centres have closed. As a result, those referred because of possible maltreatment have increased (though only 33% of these actually received a service). There has been a 74% increase in those assessed as needing a child protection plan. More strikingly, 83,840 children are now in out-of-home care (up by 41% since 2008). Most striking is the increase in older children (aged 10 or over) entering care. Family stress and domestic abuse and addictions, in part resulting from poverty, are partly to blame, with more teenagers, especially boys, being drawn into gangs and needing protection from gang violence, but also there has been an increase of on-line sexual abuse. (these are referred to as ‘extra-familial abuse’). Some of the increase in teenagers in care is the result of an increase in increases in unaccompanied child refugees.

 

What is to be done?

There have been 3 recent government-funded but independent inquiries reporting on the problems and recommending changes.

 

  • Independent Inquiry into Child Sexual Abuse (IICSA) (2015-2022)org.uk
    This looked at historic and present sexual abuse within residential child care and boarding schools, and also churches and sports and other day services. Over 6,000 victims and survivors of CSA provided evidence and were advisors to the Inquiry. It produced high quality research, literature reviews, and investigations of known abuse. Amongst detailed recommendations for improved services. it recommended  
        - there should be new legislation requiring all working or volunteering with children to report to the police or social services if they became aware of sexual abuse (Mandatory Reporting). This is opposed by most social workers as an unnecessary addition to current legislation and to date has not been acted on.
  • The Independent Review of Children’s Social Care (the MacAlister Review)

https://committees.parliament.uk/publications/45122/documents/223512/default/

This sought and compiled evidence on problems in all aspects of children’s social care services. It recommended that there should be a big increase in funding of family support services in the expectation that this would reduce the very high costs of children in residential child care (over 80% of which, as well as around 50% of foster family care is provided by large private-for profit agencies). It particularly called for an increase in and better funding for kinship foster care. It also made detailed recommendations about practice, including more use of family meetings to decide on the services needed.

The Conservative government, before defeated in the recent election and replaced by the Labour Government, started to make recommended changes but did not make the recommended funds available (DfE (2023) Stable Homes Built on Love www.gov.uk

There is especially concern about the inadequate in home and residential services for disabled children.  One recommendation of the MacAlister review was that the Law Commission should consider whether legislation was needed to improve services for disabled children. (Law Commission Consultation – Possible changes in legislation re disabled children)

   

  • An important aspect of the UK parliamentary process is the Select Committee system. The Education Select Committee is made up of MPs from all political parties and has an important role in reviewing the work of government. In 2024 the Education Select Committee collected evidence from all those involved with providing or receiving child and family social care services Inquiry into Children’s Social Care Services. It ceased work when the election was called but the written evidence and recordings of oral evidence are available at gov.uk  The letter from the Chairman with advice to the new government makes very interesting reading
    https://parliamentlive.tv/event/index/35512eaa-99fa-4917-981e-30933618204e

 

You might also find this critical commentaries on all this of interest

Sen, R &Kerr C. (eds) (2023) The Future of Children’s Care. Policy Press  I shall come back to some of this in more detail., especially on new developments in practice and service delivery.

 

I hope this letter will stimulate some reflexions and if you have any particular questions, point you would like me to clarify or say more about, I would be delighted if you would let me know (j.thoburn@uea.ac.uk). You can find more detail about the background to my reflexions on social work on my webpage

https://research-portal.uea.ac.uk/en/persons/june-thoburn

英国からの手紙2(2024年11月25日投稿)

英国からの手紙 2(2024年11月25日)


労働党政権下での子ども家庭福祉改革

―ファミリー・グループ・ミーティングの制度化や児童養護施設改革など―

私の最初の「英国からの手紙」は、英国政府が保守党から労働党に変わった直後に皆様に「投函」しました。今回の手紙では、まず、英国のソーシャルワーク法と政策論争を理解していただくための 3 つの基本的なポイントを説明することにしましょう。

1.  北アイルランド、スコットランド、ウェールズでは、ソーシャルワークとソーシャルケアの政策はほとんどの点で議会またはスコットランド議会に委譲されていますが、英国議会はこれらの委譲された政府が利用できる資金の総額を決定しています。

2.    「ソーシャルケア」は、ソーシャルワークを含む広い意味で使われることが多くあります。私はいつも「ソーシャルワークとソーシャルケア」と言うようにしています。これは、ソーシャルワークサービス(あらゆる年齢層やニーズを持つグループ、慈善部門、民間営利部門によって提供されている)が、ソーシャルケアサービスの重要な部分であるということを強調するためです。ソーシャルワーカーは明確な専門職グループで、「ソーシャルワーク」という肩書きは法律で保護されており、政府が任命した規制当局に登録されていない人がソーシャルワーカーを名乗ることは犯罪行為です。規制当局はイングランドではソーシャルワークイングランドであり、英国の他の国々では「ソーシャルケア協議会」となっています。政府や大学のソーシャルワーク学部と協力して、これらの「規制当局」はソーシャルワークの職業に就くための要件を設定し、「実践への適合性」プロセスを運用しています。つまり、医師や看護師の場合と同様に、ソーシャルワーカーが「実践への適合性」がないと判断された場合は「資格剥奪」され、ソーシャルワーカーとしての業務を禁止されることもあります。

3.    英国におけるソーシャルワークは統一された専門職ですが、資格取得のための勉強を終えたほとんどの登録ソーシャルワーカーは、子どもや家族、障害や精神疾患のある成人、高齢者を専門に扱う地方自治体の部署や第三セクターの機関で働いています。私自身のキャリアと専門知識は主に子どもと家族のサービスに関するものなので、この手紙では子どもと家庭のサービスに焦点を当てますが、ソーシャルワーク教育全体の状況についても時々お伝えしていきます。

ソーシャルワークサービスを必要とする人々の生活を改善するために、新労働党政権が行った、または発表した変更について、さらにお伝えしようと思います。最初の手紙で述べた多くの問題と、マカリスター・レビューに示されている保守党政権のそれらの問題への対応計画については、ここでは繰り返すつもりはありません。残念ながら、改善の余地は大いにあるため、これまでのところ、状況は前回の手紙で概要を説明したときとほとんど変わっていません。

これはある程度避けられないことです。新しい政府は新しい大臣を任命する必要があり、彼らは現在担当しているサービスの長所と問題点を理解するために時間を割かなければなりません。しかし、新しい財務大臣レイチェル・リーブスが、公共サービスの改善に充てられる資金について理解するのを待ったために、大きな遅れが生じました。(そして、ここでお伝えしておきたいことは、レイチェル・リーブスが財務大臣に任命されたことで、英国史上初めて女性が経済政策を担当することになったということです。)

しかし、非常に深刻な経済問題のため、ソーシャルワークサービスを必要とする子どもや家族の生活を改善するために必要であると考えられている多くの改革のための資金は、経済状況が改善するまでは利用できないことを、新政府として明らかにしています。特に、政府は、社会保障給付を受けている家族(働いている家族も多く含む)が子ども二人分までしか資金を受け取れないという法律を廃止せず、多くのソーシャルワーカーたちを失望させました。このことは、貧困に陥っている家族の数が非常に多く、ソーシャルワークサービスを必要とする人の多くが日々の生活費を賄うのに苦労し、ボランティア部門の「フードバンク」に依存していることを意味しており、このことが他の困難に加えてスティグマを着せられる結果となってしまっています。次の「手紙」では、「貧困に配慮した」ソーシャルワークの実践についてさらに詳しく説明します。

私は最初の手紙で、保守党政権はマカリスター・レビューの提案を実施しており、新政権は特にコミュニティベースの家族支援サービスの変更に関して、開始した取り組みのいくつかを継続していると述べました。このレビューの執筆者であるジョシュ・マカリスターは労働党の国会議員に選出され、すでに新政権のメンバーと強いつながりを築いていたため、このことは驚くことではないかもしれません。

しかし、私がこの手紙を書いているちょうどその時、新しい教育大臣と児童福祉大臣のブリジット・フィリップソン議員とジャネット・デイビー議員(元児童・家族ソーシャルワーカーなので朗報)が、慣行の変更と新しい法律の詳細を示す政策文書を発表しました。「子どもたちを安全に保ち、家族の繁栄を支援する ―機会への障壁を打ち破る ―」政府勅令書1200202411月。https://www.gov.uk/government/publications/keeping-children-safe-helping-families-thrive

そこには、非常に心強い提案がいくつかあります。

2つ例を挙げてみましょう。子どもが強制的に保護される前に家族がファミリー・グループ・ミーティングを主張する権利を創設することや、地方自治体が独自の子どもの家(Children’s Homes/英国は小規模児童養護施設が一般的)を開設し、独自の里親を増やして、養護下の子どもたちのために搾取的で過度に高額な営利目的の民間施設を利用しなくても済むようにすることを奨励することです。しかし、中には私には後戻りしているように思える提案もあります。まだ全部読む時間がないので、後日この手紙で重要な部分を抜粋してみようと考えています。しかし、最後は前向きな言葉で締めくくりましょう。先週議会でこの提案を紹介した際、大臣は次のように述べています。「我らがソーシャルワーク従事者やその他の人々は重要な役割を果たしており、私たちは彼らの重要な取り組みを支援するために、さらに努力することを決意しています。」〔英国議会下院議事録. 2024 11 18 日(月曜日). p34

*この手紙についての、ジュン先生へのご意見・ご質問・ご感想は下記までお寄せください。
 先生のメールアドレスは j.thoburn@uea.ac.uk




<原文>

November 2024

A Letter from the UK 2

 

My first letter was ‘posted’ to you just after the UK government had changed from Conservative to Labour. Firstly, three general points about UK social work legislation and policy debates:

1. In most respects social work and social care policies are devolved in N Ireland, Scotland and Wales to Assemblies or the Scotland Parliament, although the UK Parliament decides how much overall funding is available to these devolved governments.

2. Very often ‘social care’ is used as a broad term that includes social work. I always make a point of saying ‘social work and social care’ to emphasise that social work services are a crucial part of social care services (for all age and needs groups and in the charitable and private-for-profit sectors). Social workers are a distinct professional group: the title ‘social work’ is protected by law and it is a criminal offence to claim to be a social worker if not registered with the government appointed Regulators. In England this is Social Work England- in the other UK nations ‘Social Care Councils’. In collaboration with the government and University Schools of Social Work these ‘Regulators’ set the requirements for entry to the profession of social work and then operates ‘fitness to practice’ processes. This means that if a social worker, as is the case with doctors and nurses, is found not to be ‘fit for practice’ they can be ‘struck off’ and banned from working as a social worker.

3. Social work in the UK is a unified profession, but after completing their qualifying studies most registered social workers work in local government departments or third sector agencies that work specifically with children and families, adults with disabilities or mental health problems, or older people. My own career and expertise have mainly been with children and family services so I will concentrate in these letters on this, but I will sometimes let you know what is happening about social work education as a whole.

I would like to be telling you more about changes made or announced by the new Labour government, to improve the lives of those needing social work services. I won’t here repeat what I said in my first letter about the many problems, and the Conservative Government’s plans to deal with them as set out in the MacAlister Review. To my regret, as there is much room for improvement, to date the position is much as it was when I provided the overview in my last letter. This is in part inevitable- any new government has to appoint new Ministers and they have to take time to understand what are the positives as well as the problems with the services they are now in charge of. But a big delay was caused by waiting for the new Chancellor of the Exchequer, Rachel Reeves, to understand what funding is available to pay for improvements to our public service. (And I want to say here that with the appointment of Rachel Reeves as Chancellor of the Exchequer, for the first time in UK history we have a woman in charge of economic policies.) But because of very serious economic problems the new government has made clear that finance for many of the changes they recognise as needed to improve the lives of the children and families who need social work services will not be available until the economic situation improves. In particular the government has disappointed many social workers by not repealing the legislation that means that families on social security benefits (including many in work) only receive funding for two children. This has meant that the number of families in poverty is very high, and very many of those who need a social work service struggle to meet daily costs and are dependent on voluntary sector ‘food banks’ which result in stigma added to any other difficulties.  In my next ‘letter’ I will say more about ‘poverty-aware’ social work practice.

 

I mentioned in my first letter that the Conservative government was implementing the proposals in the MacAlister Review and the new government is continuing with some aspects of what has been started, especially with respect to changes in community-based family support services. This may not be surprising since the writer of that review Josh MacAlister was elected as a Labour MP and had already established strong links with members of the new government.

However, just as I write this, the new Ministers for Education and Children’s Social Care Bridget Phillipson MP and Janet Daby MP (good news since she is a former child and family social worker) published a policy paper setting out details for practice changes and new legislation. ‘Keeping Children Safe, Helping Families Thrive- Breaking down barriers to opportunities. Command Paper 1200 November 2024.   https://www.gov.uk/government/publications/keeping-children-safe-helping-families-thrive   

There are some very encouraging proposals in there.Two examples are: making it a right for families to insist on a Family Group Meeting before their child is compulsorily taken into care and encouraging local authorities to open their own children’s homes and have more of their own foster families and therefore not have to use exploitative and overly expensive private for-profit placements for children in care. But also, some proposals, which for me seem like going backwards. I have not yet had time to read it all so will pick out some key parts in later Newsletters. But end on a positive note, when introducing the proposals in Parliament last week the Minister said: (Our social work workforce and others play a crucial role, and we are determined to do more to support them in their vital endeavours.’ (Hansard Monday 18 November 2024 p34)

英国からの手紙3(2025年3月30日投稿)

英国からの手紙 3 (2025330日)

 

子どもソーシャルワーカーに関わる3つの法案への期待と懸念

 

ジューン・ソバーン CBE, LittD. 名誉教授

(イースト・アングリア大学 ノリッジ)

この「イギリスからの手紙」も3回目となり、労働党政権が発足して9か月が経過しました。ソーシャルワーカーのための国際的な価値に関する声明では「社会正義、人権、集団的責任の原則を守ること」が求められています。このように、ソーシャルワーカーの関心事は非常に政治的なものであるにもかかわらず、現在のイギリスでは、ソーシャルワークが専門職としても学問分野としても政治家からあまり注目されていないことに、私は衝撃を受けています。そう思うのは、現在議会で審議されている3つの法案が、ソーシャルワークサービスを必要とする子どもや家族に深刻な影響を及ぼすことが明らかだからだからなのです。

1. 子どものウェルビーイングと学校に関する法案

この法案の前半部分では、政府の政策文書『子どもを安全に守り、家族の成長を支援する 機会への障壁を取り除く―』で提案された内容の一部を実現することが目的となっています。この政策については、前回の「イギリスからの手紙」でも触れました。この法案の中でも、裁判所に子どもの保護命令を申請する前に、親がファミリーグループ会議(家族会議)を要求できるようにする提案は非常に歓迎すべきものです。議会での議論はとても興味深く、特に、かつて「家庭外でのケア」の下で育った経験のある新しい国会議員たち(私たちは「ケア・エクスペリエンスド(ケア経験者」と呼びます)の意見は重要です。この法案の一部は、遅れにより子どもの安全を危険にさらさないように規定されており、ソーシャルワーカーや親支援団体から歓迎されています。また、ファミリーグループ会議はもっと早い段階で行われるべきであり、子どもが社会的養護から家庭に戻る際にも有効であると指摘されています。また、親族が子どもを育てる「親族ケア(Kinship Care)」に対するより確実な所得保障や、実務的・ケースワークサービスを提供することが義務付けられる規程も、ソーシャルワーカーに歓迎されています

しかし、地方自治体の児童福祉部門に「専門的な多職種チーム」を設置することを求める条項には懸念があります。研究でも指摘されているように、このことは地域の家庭支援のための資金や経験豊富なソーシャルワーカーが削減される可能性があり、問題が深刻化する前に予防的な支援を受ける機会が奪われる恐れがあります。結果として、児童保護サービスを必要とする子どもの数が増加し、社会的養護の必要性も高まるかもしれません。特に、児童保護会議の独立性のある議長を務める経験豊富なソーシャルワーカーが、経験の浅いワーカーに置き換えられてしまうことへの懸念が強まっています。西郷教授がロンドンやバローインハーネスで保護者にインタビューした際に気づいたこと、つまり保護者たちにとって、これらの会議の議長を務めるソーシャルワーカーが、ケースワークの決定を下す人ではなくなっていることがとても重要なのです。ソーシャルワーカーが決定を下す人でなくなることにより、保護者自身が何が問題だと考えているのか、そしてどんな支援が必要だと考えているのかについて、新たな視点で聞いてもらえるようになるのです。

また、現在約80%の(小規模な)児童養護施設を運営する民間企業の、過度な「利益追求」を抑制する措置が法案に盛り込まれています。これにより、地方自治体が自前の社会的養護を増やしたり、地元の「非営利団体」と協力して、地域内で(小規模な)児童養護施設を提供できる体制を整えたりすることが期待されています。

2. 警察・刑事証拠法案

この法案には、子どもを地域の暴力やオンライン上の搾取から守るための多くの提案が含まれています。特にソーシャルワーカーの間で懸念されているのは、「児童に対する性的犯罪」を知った場合、すべての児童福祉関係者に警察および児童福祉サービスへの通報を義務付ける法律の導入です(これは、私が最初の「手紙」で紹介した、「子どもの性的虐待に関する独立調査委員会」(IICSA)の勧告に基づいています)。世界の多くでは、「義務的通報」法が存在します。英国はこれまで「義務的通報(Mandatory Reporting)」制度を採用しておらず、専門職としての制裁(例:「専門職登録の抹消」など)を通じて対応してきました。しかし、この法律については、研究に裏付けられた子どもへの危険性へ強い懸念が、ソーシャルワーカー、教師、医療従事者から示されています。

  • 子どもがソーシャルワーカーや他の専門職への信頼を失い、虐待について話す機会が減る可能性があります。子どもたち自身の秘密が守られるかどうか確信が持てなければ、助けを求めたり、ソーシャルワーカーやセラピストに虐待されていることを伝えたりする可能性は低くなります。
  • さまざまな国の研究者により特定された、もう一つの問題は、「義務的通報」の導入により、専門家たち(教師や医師、ユースワーカー、セラピスト)が資格を失うことを恐れ、証拠が不十分な過剰な報告を行い、通報が増加する恐れがあるということです。これにより、すでに過負荷状態にある子ども福祉サービスがさらに逼迫することが懸念されています。

3. 「安楽死」法案

国会で議論されている3番目の法案です。重要かつ非常に議論の多い法案です。主に、障害者や高齢者と共に仕事をするソーシャルワーカーに関係するものです。この法案は、末期患者で余命6か月未満と診断された成人が、医療的支援を受けて自らの生命を終えることを可能にするものです。この法案では、最終的な承認を行う審査委員会に「上級弁護士、精神科医、ソーシャルワーカー」を含めるという提案がされています。

 

ご覧のとおり、新しい政府は次々と新しい法律を提案しており、その多くは前向きなものですが、一部にはソーシャルワーカーや、彼らの関係性を重視した支援を必要とする子どもや家族に悪影響を及ぼす可能性のあるものも含まれています。前回の「イギリスからの手紙」でも触れたように、障害のある子どもの親たちは、支援や実務的なサービスを求める際に、「実践的な支援と経験豊富なソーシャルワーカーとの信頼関係を必要としている親」ではなく「虐待の疑いのある親」として扱われることに強い懸念を抱いています。

これは、貧困下で子どもを育てる家族にも同じことが当てはまります。いくつかの主要な研究報告によると、深刻な貧困状態や健康・安全上危険な住環境で暮らす子どもの数は増加しています。これらの研究は、貧困状態にある親が児童保護の懸念から調査を受ける可能性が高く、その子どもが(小規模)児童養護施設に送られる可能性が高いことを示しています(下記の参考文献を参照)。前政権は「3人目以降の子どもへの社会保障給付の制限」(2子制限)を導入し、その結果、社会保障給付に頼る家族は3人目以降の子どもに対する給付が受けられなくなりました。この制限を撤廃すれば、一気に100万人以上の子どもを貧困から救うことができると期待されていました。しかし、労働党政権はこの制限を撤廃せず、ソーシャルワーカーたちは政府の対応を強く批判しています。貧困は子どもと家庭のソーシャルワークにおける「壁紙」と表現されており、「貧困を意識したソーシャルワーク(Poverty-Aware Social Work)」は、今やソーシャルワークサービスの不可欠な要素となっています。

そしてもちろん、世界情勢を考慮すると、政府の財政状況はますます厳しくなっていることを無視することはできません。防衛予算により多くの資源が割かれる中、ソーシャルワークサービスは引き続き資源不足に陥り、さまざまな困難を抱える家族やソーシャルワーカーにとっての課題はさらに増していくでしょう。

次回の「イギリスからの手紙」では、「貧困を意識したソーシャルワーク」について詳しくお話しする予定です。今回触れた内容について、詳しく知りたいことがあれば、ぜひ私(j.thoburn@uea.ac.uk)までご連絡ください。

·        Hood, RickGoldacre, AllieJones, EdMartin, EmmaClements, KeithWebb, Calum2024)「ソーシャルワーク評価後の介入経路:イングランドにおける子ども福祉の全国行政データ分析」『The British Journal of Social WorkISSN(印刷版)0045-3102(先行公開電子版)。

·        Morris, K.Mason, W.Bywaters, P.Featherstone, B.Daniel, B.Brady, G.Bunting, L.Nughmana, J. H.Scourfield, J.Webb, C.2018)「ソーシャルワーク、貧困、および子ども福祉介入」『Child & Family Social Work23(3)364-372. https://doi.org/10.1111/cfs.12423

英国からの手紙3資料①・②(2025年3月30日投稿)


■英国からの手紙3 資料①

(英国下院教育特別委員会へのレイ・ジョーンズ教授の提出文書)

イングランドにおける児童社会福祉サービスの最近の見直しには、多くの前向きな点があります。例えば、過去14年間の財政削減を撤回することを求める声や、家族支援や親族による養育への注目などです。しかし、一方でいくつかの懸念や不安もあります。


経験豊富なソーシャルワーカーを子ども保護ソーシャルワーカーとしてのみ従事させることについて

保守党政権が承認し、新たな労働党政権も引き続き試行・推進している今回の提案では、経験豊富なソーシャルワーカーが児童保護の調査や計画に関わる場面のみに限定されしまうことになります。しかし、このことは意図しない悪い影響をもたらす可能性が大いにあります。

1 マカリスター・レビュー(MacAlister review)の主旨が損なわれる

マカリスター・レビューでは、家族が困難に直面した際、早い段階で多くの支援を提供することを提案しています。しかし、今回の提案では、特に貧困や困窮の状況にある家族が、経験豊富なソーシャルワーカーの支援を得るためには子どもの保護手続きや手順を使わざるを得なくなり、かえって家族支援の主旨が損なわれてしまう恐れがあります。

2 他機関による過剰な「子ども保護」認定のリスク

他の支援職や関連機関が、経験豊富なソーシャルワーカーの関与やその保険適応を求めるために、家族の問題を「子どもの保護が懸念されるケース」として過度に強調してしまう可能性があります。しかし、結果的には、家族は経験の浅い職員による継続的な支援を受けられるに留まり、経験豊富なソーシャルワーカーは監視やモニタリングに限定されてしまうなどの恐れがあります。

3 地域とのつながりの喪失

子ども保護を専門とする多職種チームは、より広範囲を担当する必要があるため、中央に配置され地域社会とのつながりが薄くなってしまいます。つまり、地域のネットワーク、幼児支援サービスや、近隣の警察官、GP(かかりつけ医)、保健師、青少年支援機関、学校などとの連携が限られてしまうのです。彼らは、パラシュートでその地域に飛び込み、必要な情報が不足した状態のまま子どもの保護調査を行うことになります。そして、その後去ってしまうのです。

4 児童保護調査の急増とその影響

過去14年間で子どもの保護調査の件数は飛躍的に増えています(20092010年で152%増加)。そのうち子どもの保護ケース会議に至るのはわずか33%に過ぎません。実際、家族は子どもの保護調査という忌まわしい介入を受けているものの、多くの家族には、子どものケアに関する深刻な問題は発見されていません。

5 子どもの保護計画の対象となる問題の本質

子どもの保護計画策定につながる際の主な理由は、身体的虐待(7%)や性的虐待(4%)ではなく、心理的虐待(37%)やネグレクト(49%)です。これらの問題は、ストレスやトンネルの先の光が見えないような長期的な貧困によって引き起こされる場合が多いです。しかし、新しく配置される子どもの保護専門ソーシャルワーカーや、遠隔地から来る多職種チームによって、家族は支援ではなく、監視と管理の対象になってしまう可能性があります。これらの家族に必要なのは支援です。

6 行政機関や専門家の懸念

子どもサービス局長、Ofsted(教育基準局)、BASW(英国ソーシャルワーカー協会)などは、政府が導入すると思われるこの方向性について懸念を表明しています。さらに、初期の試行プログラムの報告によると、この偏った役割を担う経験豊富なソーシャルワーカーの採用と確保は難しいことも分かっています。

 

営利企業による児童社会福祉サービスの継続について

スコットランド、ウェールズ(および北アイルランドの実践)とは異なり、イングランドでは依然として民間企業が子どもの施設ケアや里親ケアを提供しています。子どものケアサービスのための公的資金から、莫大な利益が生み出される一方で、質の低いケアが、子どもの家族や担当ソーシャルワーカーから遠く離れた場所で提供されている状況が続いています。

マカリスター・レビューではこの問題について触れていましたが、結局勧告内容はは、地域の委員会や共同組織を通じた民間サービスの適切な委託・購入することでした。しかし、このことでむしろ状況を悪化させてしまっています。自治体やソーシャルワーカーが、配置する民間施設についてより把握しづらくなるからです。入所施設が遠方になるだけでなく、委託プロセスも遠隔地で実施されることになります。

この民営化の大きな流れを止めるためには、現在地方自治体が依拠している体制を急激に転換させるのではなく、ゆっくりした、段階的なアプローチが必要です。

改善策として考えられる2つの方策

  1. 自治体の(小型の)児童養護施設の再構築への財政支援
    自治体が地域の(小型の)児童養護施設を再構築できるよう、大規模な助成資金を提供すること。さらに、自治体に対し、直接運営・提供する子どものケアサービスの充実に向けた計画と進捗を毎年DfE(教育省)へ報告することを義務付けること。
  2.  全国的なデータ収集と評価の強化
    全国データやパフォーマンス指標で、地方自治体が直接運営する里親ケアや(小型の)児童養護施設で「保護されている」子どもの割合を報告することを義務化すること。また、Ofstedの検査や各地方自治体の報告では、子どもがその自治体の管轄地域内でケアを受けているかどうかにも焦点を当てること。

 

レイ・ジョーンズ(Ray Jones

2025116

 

 

 

■英国からの手紙3 資料① (原文)

Submission from Professor Ray Jones to The Education Select Committee of the House of Commons

There is much which is positive in the recent review in England of children's social services, including the call to reverse the funding cuts of the past 14 years and the focus on family support and on kinship care, but with a few concerns and anxieties as well:

HOLDING BACK EXPERIENCED SOCIAL WORKERS AS EXCLUSIVELY CHILD PROTECTION SOCIAL WORKERS

The proposal, which was accepted by the Conservative government and which continues to be piloted and promoted by the new Labour government of holding back experienced social workers to only become involved with families when there are child protection investigations and plans has all the warning bells of unintended consequences:

1.     He thrust of the MacAlister review to provide more help for families when they start to struggle will be undermined by even more families, usually in the midst of significant poverty and deprivation, being drawn into child protection processes and procedures as the means of getting attention and

2.     Other workers and agencies will talk up concerns about families as child protection concerns to get any involvement from, and the insurance cover of the involvement of, experienced social workers. But all the families will get is continuing contact with less experienced and confident workers with experienced social workers being held back and limited and trapped in monitoring and surveillance roles.

3.     The social workers in the specialist child protection multi-disciplinary teams will be more centrally located as specialist teams need to cover a wider area. They will be more remote from communities, will not have local knowledge of neighbourhood networks, and will have much more limited relationships with early years services, neighbourhood police officers, GPs, health visitors, youth workers, schools etc within a community area. In essence they will parachute in to do a child protection investigation with limited local

4.     There has over the past 14 years been an exponential growth in child protection investigations (+152% since 2009-2010), but only 33% lead to child protection case conference. In effect, families have had the threatening intrusion of a child protection investigation with no significant concerns then found about the care of their children.

5.     Even when there are concerns leading to child protection plans these are not about physical abuse (7%) or sexual abuse (4%) but about emotional abuse (37%) and especially neglect (49%), which are heavily related to families under stress and going under when immersed in longer term poverty with no light at the end of the tunnel. These families need help not the anxiety-provoking and harassing oversight of child protection plans by this new breed of exclusively child protection social workers and remote multi-disciplinary teams.

6.     Directors of children’s services, Ofsted and BASW  https://www.communitycare.co.uk/2024/04/10/seven-more-councils-chosen-to-test-family-support-and-child-protection-reforms/ have expressed their concerns about this direction of travel which seems to have been accepted by the government and the reports from the initial pilots is that is has been difficult to recruit and retain experienced social workers to take on this skewed role.

CONTINUING TO ALLOW PRIVATE FOR-PROFIT PROVISION OF CHILDREN'S SOCIAL CARE

Unlike in Scotland and Wales (and unlike in practice Northern Ireland) England has not turned away from private companies providing residential and foster care for children. BIG profits are being taken from the public funding for children's care services whilst poorer quality care is provided remote from children's families and at a distance from the children's social workers. 

The MacAlister review commented on this concern but the recommendation was for the better commissioning and purchasing of private sector services through regional commissioning and purchasing consortia. This will only make it worse - local authorities and social workers will have even less knowledge of the private sector placements they are making. Not only will the placements be at a distance but the commissioning will also be at a distance. 

This tanker of privatisation does need to be turned! Two ways forward whilst not a big bang destabilisation of current arrangements on which local authorities have become dependent, so a softly softly approach is necessary:

  • Make available a larger capital grant to local authorities to rebuild their own local capacity in residential children's homes and require local authorities to file an annual report with the DfE on their plans and progress in having sufficiency in directly managed and provided local children's care services. 
  • Have a requirement within the national data sets and performance measures to report on what proportion of children 'looked after' are within foster care and residential services directly managed by the local authority, and have as a part of Ofsted inspections and each local authority report a focus on whether children are being cared for within the local authority's own area. 

Ray Jones

16.1.2025




■英国からの手紙3 資料②(原文)

Children's Wellbeing and Schools Bill (12th February 2025)     英国議会HP

Children’s Wellbeing and Schools Bill: evidence for the Public Bill Committee (February 2025)  Mike Stein

Summary

·       The Children’s Wellbeing and Schools Bill includes important and welcome measures to improve the lives of children in need of help, protection and those living in and leaving care.

·       To ensure all children and young people are able to fulfil their potential will require Government action to address child poverty, end austerity and rebuild public services.  These are the foundations stones upon which the legislation must build to transform children’s lives

·        By ratifying the adoption of the United Nations Convention on the Rights of the Child (UNCRC) the UK have endorsed a commitment to ensure all children: have the right to live free from poverty are entitled to be protected; to participate in decisions which shape their lives, and; to be provided with services to meet their needs

 Paragraphs 6 to 14  (in italics) contain the main recommendations 

Mike Stein is an Emeritus Professor in the Department of Social Policy and Social Work at the University of York. A qualified social worker, he worked in probation and children’s services. From 1975 at Leeds and 1995 at York University, Mike has carried out and directed pioneering research studies: on young people leaving care, in the UK and internationally; the neglect and maltreatment of teenagers, and; those who go missing from home and care. Mike has also been involved in the preparation of Guidance and training materials for Leaving Care legislation, including the Children Act 1989, the Children (Leaving Care) Act 2000 and Planning Transition to Adulthood for Care Leavers, 2010.  He acted as the academic adviser to the Quality Protects research initiative and was a member of the Laming Review on ‘Keeping Children in Care out of Trouble’. This evidence, submitted in a personal professional capacity, arises from Mike’s long standing commitment to promoting the rights of young people through research, policy and practice.

The right to live free from poverty

1.     In response to the increase in children living in relative and extreme poverty (destitution) since 2010 (over 700,000 increase since 2010, currently over 4 million children, including 1.8 million children in destitution) and MP’s concerns about the impact of the two child limit on benefits, the Government set up a ministerial Child Poverty Taskforce in July 2024 (supported by a Child Poverty Unit in the Cabinet Office), and due to report in ‘spring 2025’.

 

2.     The taskforce is an opportunity to consider the comprehensive evidence of the impact of poverty: how poverty severely damages children’s health, education and wellbeing and is closely associated with an increased demand for children’s services, and is causally associated with children coming into care.

3.     The policy implications include: the need to reverse the two-child limit on benefits, end the benefit cap and introduce an ‘essentials guarantee’, to ensure all families have enough income to meet their needs without having to resort to the indignity of charitable aid.

4.     The Government have made a general commitment to end austerity and rebuild public services (September, 2024). Since 2010 the Conservative government’s austerity policies, including major reductions in local authority funding, have had a devastating impact upon children’s services. This has included cutting the Sure Start programme, major reductions in local authority family help, substantial cuts to youth services and the rationing of young people’s mental health provision. 

5.     This has resulted – in conjunction with the rises in child and family poverty - in increased demands for a range of preventative services, high levels of unmet needs until they reach crisis levels, and entirely ‘preventable’ additional numbers of children coming into care.  This is the context for the implementation of the Children’s Wellbeing and Schools Bill.

6.     The Government’s Child Poverty Taskforce should detail evidence of the impact of child poverty and inequality on children’s health, education and wellbeing and introduce comprehensive proposals for addressing these in conjunction with the Children’s Wellbeing and Schools Bill.

The right to protection

7.     In a Bill designed to protect children, and in the immediate aftermath of the Sara Sharif tragedy, the removal of the ‘reasonable chastisement’ defence of physically assaulting a child, is urgently overdue

The right to participation

8.     Given the welcome direction of policy to enhance the rights of children and young people, the Bill should ‘place a duty’ on the local authority ‘to seek and give due consideration to the wishes and feelings of children’, to participate in family group decision making meetings

The right to provision

9.     The Bill should ensure all children in care be legally entitled to receive ‘care’ until they are 18 years of age. At present this is denied to, and discriminates against, many young people, aged 16 and 17 years of age, who are ‘placed’ in poor quality unregulated accommodation, and often exploited, many miles from their families and communities

 

10. The Bill should ensure the provision of children ‘staying close’ to their accommodation and former carers, entitles them to the same assistance, including financial support, as those ‘staying put’ in foster care: a failure to do so discriminates against the former far more vulnerable group

11. The Bill should extend ‘priority need’ under homelessness legislation for care leavers from 18 years up to 25 years of age

12. The Bill should define the purpose, describe the type of regime, detail the funding and stipulate the intended outcomes proposed by Clause 10 –‘widening places where looked after children can be deprived of their liberty under the Children Act 1989’

13. The Bill should introduce measures to end profiteering in the provision of all children’s social care, including residential and foster care placements, children’s homes and any specialist residential provision, to end the ongoing transfer of much needed funding from children’s services

14. The Bill should ensure the provision of a locally based family and community service with experienced qualified social workers, for early help, children in need and child protection work – not just the latter group, as proposed, as this will seriously undermine the Bill’s provision for effective early intervention

CONTACT

子ども家庭福祉研究・研修機構
Research and Training Institute of Social Work with Children and Families

東京都目黒区(有)西郷コンパウンド内
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